私の感情労働体験記

最後はサブマネージャーに昇格してから感じたことを書いてみます。

サブマネージャー編

チーフスーパーバイザー(CSV)を2年経験し、サブマネージャーに昇格しました。サブマネージャーとは管理職に相当します。CSVまでの「現場」の仕事ではなく、会社側に立った仕事がメインとなります。所属センター全社員の管理、人事考課、庶務、マネージャーの補佐など。クライアントに対しては請負業務の共同作業というよりは、会社の「顧客」という視点で接することになります。守秘義務があるので詳しい事は省きますが、現場の事は現場に任す、となります。

ところが、こうはなりませんでした。というのも、私はオペレーターから育ってきた人間です。クライアントの委託業務の事は何でもわかります。当時のマネージャーも一緒に仕事をしてきた方なので、同じく何でもわかります。管理職になったからと言って、そんな二人をクライアントが手放す訳がないのです。

その結果、私に待ち受けていたものは、とてつもない量の仕事でした。

いつ寝るの?家帰れるの?そんな状態でした。もちろん、家には帰って寝ましたが。

では、どんな仕事をやったのかと言うと、

  • クライアントの採用計画から、社内での立案、調整、実行。
  • リクルート業者との求人企画、求人誌掲載。
  • 応募者への採用面接。
  • OJTの進捗把握。
  • 担当するCSVの受け持ち各チームの進捗把握。
  • 担当するCSVの受け持ち各チームのスーパーバイザーの育成サポート。
  • 担当するCSVのスーパーバイザーの面談オブザーブ。
  • 必要に応じて、各チームのオペレーターとの面談。
  • 必要に応じて、各チームスーパーバイザーとの面談。
  • 必要に応じて、研修の企画、実施。
  • クライアントへの週次の進捗報告会議。
  • クライアントからの指示事項の具体化作業。
  • 事務事故や問題発生時のクライアントへの報告。
  • クレーム時の責任者対応やクライアントへの報告。
  • CSVによるクレーム三次対応後のフィードバック。
  • センター内総務、庶務、間接業務。
  • 社内会議や行事の参加。

などなどです。

サブマネージャー時代に感じたこと

私は2年半発信のセールスオペレーター、1年間発信オペレーターとオペレーターフォローのリーダー、3年間スーパーバイザー、1年半CSVを経験し、サブマネージャーになりました。そこで感じたことを、以下羅列してみます。

コールセンターという業種について

  • クライアントの方針に翻弄される。
  • 天変地異などの環境要因でも翻弄される。
  • 会社にとって大事なのはクライアントからの売り上げ必達。
  • ヒラ社員から積み上げれば誰でもマネージャーにはなれる。
  • 幹部の方針や想いは、現場管理者のフィルターによって伝わり方が変わる。現場管理者が無意識に精神的な束縛で使うこともあったりする。
  • オペレーターとは一見誰でも出来そうな仕事だが、誰でも出来るわけではない。
  • 誰でも出来る仕事と募集するからこそ、しっかり教えなければならない。
  • 何か起こると、社内の色々な幹部や役職者が刺さって来る(?。?)。
  • マネージャークラスでも、けっこう辞める人が居る。

私が在籍した、いわゆるベンダーと呼ばれるコールセンターは、クライアントの意向でどうにでもなります。業容を拡大するから人を増やせと言われれば、かき集める。縮小するから人を減らせと言われば、減らす。他の部署への異動、受け皿がなければ離職。クライアントが要求する実績を出せていないと、切られることもあるわけです。もちろん稀なケースですが、実際に起きています。オペレーターは裏事情を知らないのですから、尚更翻弄されます。難しい世界です。

 

コールセンターの仕事は、お金を扱わないので動きや流れが見えません。モノもありません。ファーストフードやコンビニでのバイトのような「肌感覚」がないのです。仕事を通じて会社とクライアントの取引がイメージしにくいし、仕組みも教わらない。私はCSVになって知りました。それも何となくです。こういうお金の流れは全員知っていた方がいいのにな、とは思いました。

 

コールセンターに入る人の中には志を持って入る人もいます。いずれはスーパーバイザーになりたい、そういう人はなれます。辞める人が多くてなり易いからだろ?と言う人もいるかも知れません。それはそうなのですが、じゃあ、他の人は何故なれないのか?そう考えると何を意識しているかの違いであることは明白です。辞める人が多い環境すら利用するのですから。だから、そういう人はマネージャーにもなれます。

 

私が在籍した会社は、本社の間接部門の人数が少なく、自分のセンターの総務、庶務はセンターの管理職がやります。マネージャーと私ですね。けれども在籍人数が170人ほどいたので業務量はメチャクチャ多いのです。マネージャーはマネージャーならではの仕事もあるので、結局私がやる訳です。そして、「何の意味があるんだ?これ?」と思う仕事もあったりして、時間的、物理的なキャパシティーを完全に超えていました。

そこで勝手に仕事の棚卸しをやる。不必要と思う仕事を放置してみる。放置した仕事について何の要求も確認もなければ、その仕事はもうやらない。こんなことしながらやり繰りしていました。

サブマネージャーについて

  • CSV時代に管理職教育はなく、管理職になっていきなり現れる仕事を引き継ぐ。
  • 仕事は対外的なものも出てくるので、幅は拡がる。
  • マネージャーや会社幹部との接点があり、一応相談はできる。
  • 当たり前だが、クライアントから数字は詰められる。
  • 携帯電話を持たされるので、公休日も電話は鳴りまくる。
  • 長時間労働で心身は疲弊しているので、公休日は寝て曜日。
  • クライアント交渉は会社も協力してくれる。
  • 現場管理者の判断を尊重する。
  • ミスをしたオペレーターを守れるかどうかも、最後は管理職次第。
  • 求人誌掲載の段階でのミスマッチ応募を防ぐのは必須事項。
  • 応募者のミスマッチ採用を防ぐのは面接担当者の腕。

クライアント業務の実績及び会社の業績という大きな二つの視点で仕事をするので、仕事量は増えます。ですが、自分自身の経験と捉えると他の仕事でも十分対応できる自信がつきます。しかし、社内業務についてはサブマネージャーになってから現れる仕事がほとんどです。形だけの引継ぎはありますが、それで分かる訳もなく、本社の人に聞きながら、何とか憶えていきました。そりゃ、帰れません。

と、まぁ、いろいろ大変だったのですが、私が培ったものの中で一番大きな学びとなったのは採用実務と、採用実務から見えてきたコールセンターで働く人の感情です。

リクルート業者との連携

求人誌に募集を出します。その際、掲載する求人誌の担当者とどういう誌面にするかといった打ち合わせを行います。募集要項や掲載する写真、先輩オペレーターのインタビューなど多岐に渡るものです。私が所属したセンターは金融商品の発信セールスです。オペレーター同士が仲良く映っている写真を載せればいいってもんじゃありません。発刊ごとにテーマを決め違うオペレーターに登場してもらうので、求人誌の担当者が入社の動機や心掛けていること、これから入社する人へのメッセージなどをインタビューします。リクルート業者と連携しながら、それらを上手くコーディネートして決定稿を作ります。そして発刊です。

応募の受け付け時は、媒体ごとの集計を取る。それを次の募集に活かす。詳しい事はわかりませんが、リクルート業者はノウハウの塊です。言う通りにやると効果が表れますので、その道のプロに任せるものだな、と勉強になりました。

採用面接

CSV時代に1回やりましたが、本格的に携わったのはサブマネージャーになってからです。私が所属したセンターは金融商品のセールスオペレーターの採用です。クライアントの計画もあり人は欲しいのですが、ミスマッチは有ってはならない。せっかく入ったオペレーターが辞めてしまっては、お互いに不幸です。そこで私は、面接で伝えられる範囲でしっかりと伝え、都度応募者の反応も確認しながら時間をかけて面接しました。40分はざらで、応募者によっては1時間コースもありました。採用面接ではあるけど応募者が興味を膨らます、応募者の質問を引き出すような説明をすると、面接そのものが楽しくなるものです。

本社の人事からはよく「長すぎる」と注意されました。しかしそんな事は気にせず、自分の方針に従って粛々とやると上手くいくものです。

応募する人の中には、発信してセールスすればいいんだくらいの感覚の人もいます。口で言うのは簡単だけど、そんなに楽じゃない。面接ではいい面だけでなく実情もしっかり伝え、都度疑問形で確認し進めていきました。もちろん、導入研修やOJT、フォローアップの仕組みなども伝え、個人プレーヤーではあるけれど管理者が一体となりサポートすることもしっかり伝える。最後に本人からやります、という返事が出たら合否判断に入ります。

そして入社して仲間になったオペレーターには気をかける。面接で終わりではなく、声掛けや面談を行い、不安な点は解消し、トレーナーや現場管理者とシェアする。

こういう取り組みで、私が面接して採用したオペレーターは、ほとんど辞めませんでした。

採用業務をやりながら感じたことは、「ダイヤの原石」など居ないということです。よく「出来る人が来てくれると助かる」なんて話しも耳にしましたが、未経験者も経験者も入社する会社にとっては皆「石ころ」です。その石ころを「ダイヤ」に磨き上げるのは、採用担当であり、トレーナーやOJT管理者であり、先輩オペレーターであり、迎え入れる会社の全員です。

辞めたらまた募集して入れればいいという考えもありますが、長く安定して働く人が増えてくれば、安定した戦力になります。ノウハウも蓄積される。採用にかかる時間も減りますし、何より経費の節減になります。いろいろな視点からも、人の育成とは一番大切なことと考えます。

応募してくる人のセルフイメージ

全員ではありませんが、中にはこういう人もいます。「自分は何の取り柄も経験もないから、誰でも出来そうなコールセンターを選びました」。言葉でそう言わなくても、話してみればわかります。とてもセルフイメージが低いのです。

採用するにあたり、特に不都合な点もない。やる気がない訳ではないが、自己評価が低いのです。そういう人から見ると、コールセンターは初めから専門知識は要らない。特に資格も必要ない。まぁ、何もなくても出来る仕事みたいなイメージがあるのでしょう。もっと簡単に言えば、「誰でも勤まる大した事ない仕事」。では、そういう人を活かすにはどうしたらいいものか。小さな成功体験を積ませて、自信を持たせる機会を作ることが効果的です。

セルフイメージとは、その人が自分に与えている定義です。他人が見てそう思えなくても、その人自身が決定した定義なので、他人の評価は関係ないのです。

実際に居たのですが、国立大学を卒業し就職したが、何かが原因で1年でつまずいてしまった。他の人から見れば、国立大学出なんだから他に就職有るでしょ?と思っても、本人が人生の敗北者だと定義したら、それがセルフイメージなのです。国立大学卒というブランドがついている訳ですから、注目される本人が一番辛いでしょう。そういう人が勇気を出して、職業ステイタスが高くないコールセンターに応募する訳です。

その人の今の状態をそのまま認めて、どう成長してもらうか、という温かい気持ちがあるといいのかもしれません。

結局は働いている人が職業を通じて自分を「どう感じているか」が全て

スーパーバイザーやCSVや管理職、誰でもいいのですが、指導する側の人間がコールセンターという仕事をどう定義しているか?コールセンターで働いている自分をどう感じているか?育成ではここがダイレクトに伝わるのだと思います。また、会社幹部の想いや方針を共有する際にもフィルターとして作用します。

コールセンターとは、どうひいき目に見ても職業ステイタスは高くない。そこで働いている自分・・・、感情が振れる場面ですね。世の中には他にカッコいい仕事がある。やってみたい仕事もある。その仕事に就けない自分・・・、さらに感情が振れる。こうして外と比べて言っていたら切りがありませんが、指導する側が自分の職業を通じて自分のセルフイメージを低く見ていたら、同じ温度感で相手を見てしまうものです。先に書いた国立大学出で応募して来た人ではないですが、いい学歴やいい職歴でドロップアウトした応募者を見下げたりもするのです。

逆に、自分のセルフイメージが高い人(または低くもない人)は、何となくでも自分に自信があります。自信があるからその人の現状をそのまま受け入れ、この人なら今何が効果的だろう?といった視点で接するものです。その人の人生の歴史はどうでもよく、その人の今に向き合う事が出来る。自信があるから任せられるし何かあってもかばえる。また、会社幹部の考えや方針も、上手く変換し解りやすく伝えることが出来るのも特徴でしょう。

こういう視点での見方は、なかなか気づかないものです。働く人のセルフイメージは大事です。私が社長ならば優先事項として手を打ちます。

精神的な束縛や感謝の強要

事あるごとにこういうことを言う幹部や管理職がいました。

  • 社長が給料を払ってくれている。
  • 社長がいろいろやってくれている。
  • 社長のおかげで今のあなたがある。
  • 社長に感謝しろ。

などなど。同族会社、洗脳会社の特徴でしょうか。調和が乱れますね。

確かに社長が給料をくれます。社内の事をいろいろやってくれています。仕事で成長するわけですから、社長が雇ってくれていて今の私がある。その通りです。その通りなんですが、こういうことは社長は言いません。社長以下の幹部や管理職、その下の管理者が言います。で、どういう意図で言うのか?社長を立てる、社長への感謝という気持ちはもちろんあると思います。ただ、使い方として大体は叱責や戒めの時に使うのかな、と感じました。私はそういう場面で言われましたから。

直接社長から言われれば、誰だって真摯に受け止めるでしょう。しかし、管理職や管理者から言われて素直に聞けるでしょうか?私が思ったことは「あんたらも同じでしょ?」。結局、自分の伝え方に行き詰まりを感じた時、部下をコントロールするために使うようです。感謝とは自然と湧き上がる「感情」です。それぞれの人がそれぞれの場面でそれぞれ感じればいいのです。強要したところで生まれる感情ではありません。

セルフイメージの低い人がこれを言われたら、もう、自責、罪悪感、自己否定へ一直線です。それよりは、

  • あなたが頑張るとセンターの誰々は喜ぶよ。
  • 社長ってけっこう新入社員の成長を楽しみにしているよ。
  • あなたが頑張って給料が上がれば社長にとっても喜ばしいことだよ。

こういう言い方をしてあげた方が楽しいし、聞いている方も受け入れ易いと思います。離職が多い会社と言うのは、こういった表面上は見えにくい個々の感情も作用していると感じました。

サブマネージャーで学んだこと

  • 積み上げればマネージャーにはなれるが、その上の幹部は同族会社では無理。なのでマネージャーになったら天井と考え、次の人生を模索したらいい。もちろん、徹底的に好かれる努力をし、あくまで登りつめるのも人生。
  • コールセンターと言えども、サブマネージャーくらいになれば他の業界でも通用する経験とスキルは身に着く。
  • 仕事の棚卸しはやった方が良い。先人が「忙しい俺」を満たすために作った無用なお仕事があるかも知れない。
  • 自分のすべての部下を信頼する、任せる、責任を持つ。何かあったら一緒に経験し成長して、更に信頼関係を厚くすれば良い。
  • 面談の重要性。相手が誰であっても、その人に向き合うことはとても大切。特に感情のガス抜きはしっかりやってあげる。
  • 人を育てる、活かすのであれば、その人の「感じ方」に注意を向けるべき。人は理屈で動くのではなく、気持ちで動くから。
  • 孤独な自分の感情マネジメント。健康管理面からも大事。

この後退職しました

正確には身体が壊れそうになっていたので、壊れる前に辞めました。きっかけはマネージャー昇格の内示です。「もういいや。身体を労わろう。」全く躊躇なく辞めました。私は自分を大事にする選択をした訳です。続けていたらどうなっていたかはわかりませんが、辞めたことによって新たな人生が開けたのは事実です。

私は、職業ステイタスが決して高くないコールセンターだからこそ、多くの事を学びましたので次の人生に存分に活かしています。

 

私の感情労働従事体験記、楽しめたでしょうか?

最後までお読み頂きありがとうございました。



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