私の感情労働従事体験記(コールセンター)

オペレーターからスーパーバイザーになる前に、ワンクッションあります。「リーダー」と呼ばれていて、オペレーターもやるけど、自分のチームのオペレーターのフォローをしながらスーパーバイザーの仕事を覚える、といった立場です。このリーダーについては割愛します。

スーパーバイザー編

スーパーバイザーになると、自分のチームのオペレーターの管理、育成という立場になるので、仕事の内容や質は変わります。当然、仕事量も増え、オペレーター時代の一番の疑問が解消されました。それは、「何故スーパーバイザーは帰りが遅いのだろう?」

オペレーター時代は目の前にいるスーパーバイザーですが、オペレーターのフォロー以外は何をやっているのかよくわからないのです。

では、どんな仕事をやったのかと言うと、

  • オペレーターの勤怠管理。
  • オペレーターとの面談。
  • チームのセールス目標からオペレーターへの目標振り分け戦略立て。
  • オペレーター個々のトークスキルの把握とコーチング。
  • オペレーターのセールス進捗管理。
  • チームのセールス進捗管理から戦略見直しや目標再振り分け。
  • オペレーターへの研修(コンプライアンスや法令、トークスキル向上や商品知識)。
  • オペレーターのログ聞き(セールストーク精度や通話品質)。
  • クレーム時の二次対応。
  • クレーム対応後のフィードバック。
  • セールストークの見直しや改善。
  • 資料作成。
  • セールス向上のミニイベントの企画。
  • センター全体や他チームの進捗把握。
  • センター目標達成の自チームへの再振り分け時のアクションプラン策定。
  • 盛り上げ。

などなどです。

何か一気に仕事が増えたな~、こりゃ終電だよ、っていう感じでした。

スーパーバイザー時代に感じたこと

私は2年半、発信のセールスオペレーターをやり、発信とフォローのリーダーを1年経験しスーパーバイザーになりました。そこで感じたことを、以下羅列してみます。

コールセンターという業種について

  • コールセンターが生まれた目的や社会的な背景がよくわかった。
  • 指導者として、コンプライアンスや法令など、覚える知識は絶対マスト。
  • クライアントの要求に応えることだけが求められる。
  • 会社のビジョンや方向性は、スーパーバイザーにもよくわからない。

私が入社した時、在籍したセンターはオープン間もなく、スーパーバイザーは他の部署から来た人たちで構成されていました。その後も他の部署から異動で来る人は居ましたが、私のように3年以上もオペレーターを経験してからスーパーバイザーに昇格する人は居ませんでした。そういう点では、色々と経験を積んだので、やれと言われて躊躇なく昇格しました。もちろん、帰りが遅い・・・というところが引っかかり、多少の抵抗はしましたが(苦笑)。

 

コールセンターとは、元々それぞれの部署で顧客対応をしていたものを、本業に専念できるようにと、外部からの問い合わせを一元化したことが始まりと言われています。

セールスなどの発信の場合は、訪問に比べて電話は効率が良い。何かしらの取引がある顧客に対して、事前にDMを送れば何パーセントかの顧客は目を通す。よって新規商品の提案がしやすい、などの理由でテレマーケティングというビジネスモデルが生まれたのだと思います。こういった歴史や背景は、入社時に知っておいた方が良い、とも感じました。何事も、先ず知るは歴史です。

 

私が在籍した会社はベンダー、つまりコールセンターという業種の専業です。色々なクライアントの業務を請け負っていますので、センターごとにやることが違います。インバウンドと言って問い合わせや注文などの受信業務。そして、私が携わっていたセールスの発信業務。

オペレーター時代から思っていたのですが、会社として、ベンダーとして、どの様な成長戦略やビジョンがあるのだろう、ということを知りたかったですね。目の前の仕事をやっていればいいんだ、みたいな空気が支配的だったので残念でした。会社のビジョンがわかると、仕事を続けながら、ぼんやりとであっても自分の目標が見えてくる。先々の自分がイメージ出来ると目の前の仕事の取り組み方も変わってくると思うので、本当に残念でした。

スーパーバイザーについて

  • スーパーバイザーになるには自分に「許可」を出す必要がある。
  • 仕事は共同作業ではなく単独作業、けっこう孤独。
  • 上司やその上の幹部との接点があり、広い視点から自分の仕事が見れる。
  • スーパーバイザーやその上の役職者同士は飲み会やってんじゃん・・・。
  • 当たり前だが、自分のチームの数字は詰められる。
  • 表面上はポジティブだが、長時間労働で心身は疲弊している。
  • 会社員だから当たり前だが、自分の保身が第一。
  • オペレーターよりは上司を見ている人がほとんど。
  • スーパーバイザー同士は、実は仲が悪い。
  • オペレーターのことを信頼するしないはスーパーバイザー次第。
  • ミスをしたオペレーターを守れるかどうかもスーパーバイザー次第。
  • 離職者は多いが、辞めなくてもいい人を再起させるのはスーパーバイザーの人間力であり腕の見せどころ。
  • 抑圧されガス抜きが出来ないので、とてもストレスが溜まっている。
  • 辞めるスーパーバイザーもけっこういる。

スーパーバイザーになる時、オペレーターから見られ方が変わります。どういうことかというと、昨日まで同じ仕事をしていた他のオペレーターを指導する立場に変わるので、スーパーバイザーとしてのジャッジをされる訳です。

  • 自分よりも経験が長いオペレーターもいる。
  • 自分よりもパフォーマンスが高いオペレーターもいる。
  • クセのある気難しいオペレーターもいる。
  • いつもスーパーバイザーに噛みついているオペレーターもいる。

などなど、いろいろなタイプのオペレーターが居ます。仲よしこよしでは勤まりません。自分の経験を自分で認め、それで良しとしてぶつかっていく覚悟が必要なのです。オペレーター時代の自分を捨て、自分が変わることを「許可」する必要がある訳です。そして、スパッと変わればいいのです。

 

オペレーターの育成の成否がチームの数字に表れるという点では、けっこうシビアです。トークの改善やコーチングのやり方次第では、オペレーターは良くもなるし悪くもなる。顕著に表れる。ひたすら改善点をブラッシュアップするやり方もありますが、良い点を更に伸ばし、欠点を目立たなくするというやり方もあります。私は後者を取り入れていました。理由は、その方がオペレーターが気分よく伸びるし私も楽だからです。オペレーターとは、それだけ苦行を強いられている仕事ということです。

 

オペレーターへの教え方

オペレーターへ教えるのは難しい。千差万別、多様な人がいますから。でも、どんな人であってもその人が開花したときの喜びはけっこう格別です。もちろん、その逆は焦ります。私は数々の失敗を経て、個別の面談や研修では、極力「見本」を見せるように行いました。規則に固められた仕事なので指示命令というやり方が支配的でしたが、オペレーターのパフォーマンス向上という視点で考えると疑問でした。何故なら、指示命令とは行動を戒めるという側面があるからです。

  • とにかくこうやってください。(これ以外はやるな)
  • 指示通りやってください。(言うこと聞いてればいいんだよ)
  • そんな疑問は持たなくていいから、言う通りやってください。(言われたことを黙ってやれよ)

疑っているから命令する。これでは、オペレーターは伸びません。私だったら「何故そうなの?」「何故こうやったらいけないの?」と理由を知りたいからです。人は疑問が生まれる。すると真実を知りたくなる。自然な欲求です。そこで「何故こうやるといいのか」という見本を見せて、そこから質疑応答に入ると、「そりゃこうやったら上手くないね」の答えがあっさり腑に落ちます。どんな仕事でも共通していると思いますが、仕事とは積み重ねていける楽しさや喜びがないと、続かないんじゃないでしょうか?どうせやるなら楽しくやった方がいい。そんな事を思いながらオペレーターの育成をしていました。

また、自分の経験からオペレーターの「感情のガス抜き」にも重点を置きました。

オペレーターの育成

知識面の研修であったり、トークスキルの向上であったり、数字の進捗であったり、中でもトークスキルのコーチングの占める割合は大きいです。

お客様は同じ人が居ません。その千差万別のお客様に合わせたトーク展開をするためには、オペレーターの臨機応変さも必要です。そのオペレーターも同じ人は居ません。戦略的なモデルセールストークはあるので活用すると主導権や決定力を握れますが、それもオペレーター次第。トークスキルのコーチングとは、つかみどころのない模索の連続です。

また、難しいなと感じた部分は、オペレーターのパフォーマンスによって注力の配分が変わらざるを得ないところです。数字が苦戦しているオペレーターのケアや育成を優先するあまり、取れているオペレーターはどうしても放置プレーになりがち。なので、「どっちか」ではなく「どっちも」なのです。

オペレーターとの信頼関係

規則に固められ、ルール通りにやることを求められ、ミスが起きた時に犯人捜しをされ、追及されるのがコールセンターです。しかし、人間はミスをします。ターミネーターではありません。特にオペレーターが重大なミスをしたとき、しっかりかばうことが出来るか、これもスーパーバイザーの仕事であり器でしょう。

私も散々ミスをしました。自分が悪いとわかりつつも責められるばかりだと、やっぱり辛い。それが指導の方法と言うのであればそれが正しいんでしょうけど、罪悪感や自責のループに一直線です。オペレーターによっては再起不能でしょう。なので私はその方法はやりませんでした。自分の指導に間違いがあった可能性もある訳で、自分の正当性を叫んでいるだけにしか見えない。オペレーターがついて来ないし、何より自分に嫌になる。

ミスの都度、オペレーターと一緒に成長すればいいのです。

  • 感情のガス抜きをしてあげる。
  • 正しい知識かどうかの復習。
  • 知識が正しければ、何故起きたのかを一緒に考える。
  • 知識が間違っていたら、一緒に復習。
  • 再発防止策を一緒に確認する。
  • 効果測定やテストをして確認する。
  • OKならば信頼して任せる。

自分の指導に自信があれば、指導したオペレーターを信頼出来るはず。

オペレーターを信頼出来れば、ミスしてもかばえるはず。

こういうことなんだと思います。

オペレーターの退職示唆

オペレーターの退職示唆。退職理由によっては、すぐにマネージャーや本社人事部となりますが、大抵の場合は上司と共有し、初めに面談を行うのもスーパーバイザーです。退職理由は色々ありました。ご主人の転勤など物理的な理由は仕方ないとして、やっぱり多いのが「セールスが取れない」「もう嫌になりました」「体調を崩しました」などです。とにかく辞めたいから最もらしい理由を申告してくるオペレーターも居るので、理由はどうでもいい。私が注意したのは、「この人は本当に辞めなければならないのか?」という一点だけです。

日頃の面談や声掛けなどのコミュニケーションが出来ていれば、表情や言動の変化など察知できる要素はあるので、その人がどういう状態かはある程度把握できます。

セールスが挙がらないと、罪悪感を感じ、自責をします。貢献していないと思うからです。そして存在価値のない私は辞めます、となりやすい。じゃあ、セールスが挙がっている人は辞めないかというと、そんなことはありません。挙がっているからこそ、落とせないプレッシャーや自分の中で張り詰めた緊張がある。そんな事は誰にも分らないのです。

退職示唆。その時にどういう視点でオペレーターと向き合うべきか。スーパーバイザーの人間力が問われる場面でしょう。

もちろん、スーパーバイザーで対応し切れなければ、チーフスーパーバイザーやマネージャークラスに引き継ぎます。

クレーム対応

「あなたじゃ話にならないから上司に代わって」。オペレーターから二次対応者のスーパーバイザーに代わり対応します。クレームになると通話中のオペレーターから手が上がるので、スーパーバイザーや上席者はモニタリングに入ります。クライアントのFAQに則り対応できているか?お客様の意図にかみ合っているか?返答は適切か?などを聴きながら、必要に応じてチャットなどでフォローします。

スーパーバイザーはオペレーター時代、それなりにクレームは経験しています。なので、対応そのものでテンパることはほとんどありません。

通話が終わると音声ログを聞き、クレームに至った理由や要望、それに対し適切な対応だったか?不備や改善はないか?などを確認します。クライアントへ報告し、基本的なミスや改善点があればオペレーターにフィードバックして、ロールプレイングで練習します。

この時、オペレーターには様々な感情が湧き上がります。

  • FAQ通り言えなかった・・・
  • あ~、フィードバックで色々言われる・・・
  • この前練習したばっかなのに・・・
  • あ~、異動かな・・・(根拠はない)
  • あ~、私って何やってもダメじゃん・・・(根拠はない)
  • あ~、私って何やっても勤まらない・・・(根拠はない)

他にも数えきれないくらい感情がこみ上げてきます。

その感情の特徴は、ほとんど「自分をダメ出しする」感情なのです。なので、オペレーターの感情のガス抜きもやってあげることが必要ですし、その後の仕事にも良い影響を与えます。

クレーム対応では一切の権限はない

私たちコールセンターの人間は、クライアントの指示通りの仕事を求められます。委託業務以外の事はほとんどわかりません。ですが、お客様から見れば私たちはクライアントの会社の人間です。何でも知っていると思っています。答えられることもありますが、専門的な内容や確認が必要なことは別部署の番号を案内するか、折り返しの連絡をご提案する。そこで怒りだすお客様もいます。「何でわからないの?」。

ここがコールセンターの限界です。たとえマネージャークラスの責任者対応になろうとも、権限がないので確認と指示が必要です。なので最終的な返答は誰が対応しても同じで歯切れが悪い。ここが苦しいところでした。

もっとも、クレームとは頻繁に起こるものではないので例外対応は必要ありませんが、対応者の役職が上がるごとに違うカードが使えればいいのにな・・・、とはよく思いました。

スーパーバイザー時代に学んだこと

  • クライアントや会社の方針は遵守しながらも、明確な自分の育成方針は持つこと。これがないと体当たりでオペレーターと対峙は出来ない。
  • オペレーターを信頼する、任せる。何かあったら一緒に成長して、更に信頼関係を厚くすればよい。
  • オペレーターとの面談の重要性。効率が優先されると軽視されがちだが、仕事は人がやるもの。特に感情のガス抜きは大事。
  • 自分の感情マネジメント。オペレーターからは色々言われ突き上げられ、上司からも色々言われ詰められる。溜めると体調を崩す。一番大事な事かもしれない。何かあっても会社は守ってくれないし、守ってもらうという考えでは、人生歩いて行けない。
  • パソコンのスキルが格段に向上した。研修資料でパワーポイント、帳票作成など。特にエクセルの関数が使えるようになると、これは面白いし目から鱗。

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